秋の訪れ 夢枕獏の「陰陽師」で四季の移ろいをを味わう

gura

夢枕漠作 『陰陽師』

「萩が、風に揺れているのである。紅い小さな花が、無数についた枝が、風にゆるやかに揺れているのである。晴明の屋敷の庭には、すでに秋の気配が忍び寄っている。」

小説『陰陽師』の蝦蟇念仏の話はこのようにはじまります。

『陰陽師』という物語は季節の物語でもあるのである。と、作家はあとがきで語っています。

様ざまなことが,人の人生にはある。その様ざまなことがあったあげくの秋である。

一年はまだおわっていない。

まだ残された時間はもちろんあるが、しかし、秋である。

秋には秋の風が吹き、秋には秋の花が咲く。

陰陽師を読みはじめると、カラカラに渇いた心に慈雨が染み込んでいくのがわかります。

梅雨、初夏、晩秋、冬至、そんな季節の変わり目を心の琴線に触れる言葉で、まるでその場に佇んでいるように感じさせてくれるのです。

物語には、季節の移ろいだけでなく、人の一生のなかにある春、夏、秋、冬や喜、怒、哀、楽も巧みに表現されています。読み終わるといつも「人間って切ないものだなぁ。でも愛おしいものだなぁ。」と、どっかの歌詞のようにしみじみ人生を味わえるので、この小説を読んでいる時間はほんとわたしにとっての至福のときなのです。

長い間、読み継がれている清少納言の枕草子も自然の移ろいの中で紡ぎ出される物語であり、昔から日本人は四季を感じることを愛でてきたのでしょうか。

人の一生は短い。

その一瞬、一瞬を慈しんで、味わい尽くしたい。

そんな切なる思いが、移ろいゆく季節の変化に無意識のうちに呼応してしまうのかもしれません。

いま、こうしていても虫の声がしています。秋はもうそこまで来ていますね。

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