行いは言葉よりはるかに重みを持ち、愛を示すとは、粘り強く不屈の精神で挑戦すること
こんにちは、ぐらです。
先日、ドイツの元首相アンゲラ・メルケルさんについて書かれた「メルケル 世界一の宰相」カティ・マートン著 文藝春秋を読みました。
あらためて彼女が首相として、女性として、人間としていかに素晴らしく偉大な人物であり、人類史に輝く功績を残されたかを知りました。
メルケルさんといえば、ドイツ初の女性の首相であり、2005年から2021年にわたり16年もの長期政権を担われました。
その間にさまざまな偉業を成し遂げられていますが、そのなかでもとくに世界の注目を集めたのが2015年に難民危機が起きた際に他のヨーロッパの国々が難民の受け入れを渋る中、100万人以上の難民をドイツに受け入れたことではないでしょうか。
そのほかにも
- ベルリンの壁崩壊後のドイツを軽やかに自由な社会へと変貌させた
- 同性愛者同士の結婚を合法化した
- 世界的な不況のなかでユーロ危機の改善に力を尽くした
- 環境問題に真摯に取り組み、京都議定書作成に貢献された
- オバマ大統領と強固な信頼関係を築いた
- コロナに伴う外出自粛を呼びかけが反響を呼んだ
など、枚挙にいとまがありません。
またプライベートでは6時間のハイキングを楽しむほどのタフな女性で、世界的な会議でも長時間にわたる討論会の議長を務めたりもされました。
メルケルさんの性格
メルケルさんは東ドイツという特殊な警察国家で育ちました。
その生い立ちがベルリンの壁崩壊後の東西のドイツをまとめることができる人格形成への大きな礎となったようです。
そこで培われた並外れた自制心と、飽くことのない好奇心を持った女性、端的に言えば
人の脆さを知り尽くした行動的な楽観主義者
なのだそうです。
彼女の知性と勤勉さや率直な物言い、誠実さ,慎重さは最大の魅力で、余計なことは一切話さないし、プライベートも公表しないところ
新しいものや面白いことには目がなくてユーモアのセンスにあふれて愉快なところ
オペラや音楽などの芸術やサッカーが特に好きなところ
それらが長期政権にも関わらず国民の高い支持率を得た理由のひとつになっているようです。
また、元物理学者らしく差し迫った問題に際して、まずは最小単位まで分解し、科学的な分析力を持って挑む政治姿勢にも国民から信頼が寄せられました。
とくに映像記憶能力に近いといわれる、ずば抜けた記憶力を持ち、仕事に対する情熱的な意欲、次々と湧いてくる困難とも思える問題の突破口を探り出し、解決に導いていく力が彼女の原動力であったようです。
メルケルさんの政治理念
対立は流儀ではない
政治家のゲームにつきあわない
相手国のリーダーを公然と批判せず、まず信頼関係を築く
人権問題を重要な政治課題にしている
武器によって武器を封じ込めるべきではない
武力行使では危機を解決できない
自身のプライベートには口出しさせないだけの技量を持っている
パフォーマンス的なことはせず、ただ目的を達成することのみに集中する
敵政のものであっても良いアイデアを見逃さず取り入れる
どんな問題に関しても、わずかなチャンスを見逃さず即座に対応する能力が極めて高い
人,事実、歴史、解決すべき問題、複雑な議論に胸が躍る
など、いくつかはわが国も参考にしてもらいたいものもあります。
メルケルさんの政治ポリシー
メルケルさんはドイツが史上最悪の惨事を引き起こしたことを絶えず忘れることなく、その張本人としての自覚を持ち、その責任を負い続けることで普通の国になるべきだと強く考えています。
そしてそれを静かに、かつ確実にあがない続ける覚悟がある。
ドイツが再び人種差別や外国人嫌悪というウィルスに冒されないように自覚を持つ国にすることを政治理念として掲げられているところも素晴らしいと共感します。
またこの世のとりわけ弱い人を不当に扱うべきではなく、彼らに注意を払うべきだとする博愛精神は彼女が信仰するプロテスタントの教えから培われたもののようです。
メルケルさんはドイツの宰相をつとめていたころには
謙虚でありながら、自信に満ちた国作り
というポリシーを持ち続けていました。
そんなメルケルさんにはたくさんの名言があり、これからの未来をより良くするための確かな指針がありますのでご紹介します。
メルケルさんの名言集
彼女の言葉からはたくさんの生きるヒントや勇気をもらうことができます。
たとえば
人を愛せるのは、そもそも自分を愛し、自身を知っているからです。そうして初めて”他者”に近づけます
何よりもまず自分を縛り付けているものから解放され、自分なりの居場所を作りたかった
世間の目を気にすることなく喜んだり悲しんだりする場所を持つことにしています。そうでなければ公の場で幸せではいられません。このルールに例外はありません
人として誠実に生きる等身大のメルケルさんの心情が伝わってきます
自由のない体制の中(旧東ドイツ)で35年生きてきたがゆえに,自由の価値をきちんと認識している。CDU(政党)にはそういう者がいませんでした。また予想外の出来事を進んで経験しようという者も、社会の架け橋になろうとしている者も、変化を強く望んでいる者もいませんでした。
自分の考えを信じ、たとえそれを信じているのが自分だけだとしても、それを追求し、苦楽を経験しながら耐え忍べば最後には必ずゴールにたどり着くのです
国や社会の厳しい現実と対峙しながらも、自ら信じた道をひたすら突き進むひたむきさと力強さを汲み取ることができます。
リーダーは自分の偉業を自慢しなくても、無言で多くのことを成し遂げられる
友は近くにおけ だがライバルはさらに近くにおけ
政治家として宰相としての強かな知恵を窺い知ることができます。
メルケルさんは決して傷つかない自尊心を持っているので他人の自尊心も傷つけない。そうしたことにエネルギーを使わないから目の前の問題に全力投球できるのだ(筆者)
(信仰について)
わたしは信仰を慎重に扱っています。私にとって、宗教はひじょうにプライベートな事柄です。宗教によって自分自身を許し、他者を許し、責任の重さに押し潰されなくて済みます
(自己受容について)
「私は歴史の一部であり、自分がミスを犯してもかまわないと思え、これからも間違える」と認められるから(自己受容)、果てしないストレスにさらされながらも、平成を保っていられる
(沈黙について)
沈黙に感じる心地よさは、政治家、そして交渉人としての人生に大いに役立っている。メルケルはそれを巧みに使って敵対する者の不安をかき立てる(筆者)
(ドイツという国について)
ドイツが普通の国になれるかはドイツが史上最悪の惨事を引き起こした張本人としてその責任を追い続けることである
(女性としての立場)
過剰な自信は男性の弱点だ
権力を握る女性は、自身のエゴを満たすためでなく差し迫った問題に対処するために全力を尽くす
(人格形成の基礎は、子供時代の庭師)
人生に役立つ現実的な事はすべて彼(庭師)が教えてくれました。
花の見分け方もシクラメンが咲く時期も、どんなふうに知的障碍者と話をすればいいのかと言うことも。
彼といると心が休まって安心できました。
大地とのつながり、自然とのつながりを感じられるようになったのも彼(庭師)のおかげです。
(大切なもの)
今、私は時間の大切さを痛感しています。何かを所有することよりはるかに大切だと。
(会話)
絶え間ない会話がときにはわずらわしく思えることがあります。
私にとって大切なのは、何も語る必要がない相手と一緒に過ごすことです。
言葉の端々から飾らない人となりや、こころの強さを感じました。
そのほかにも政治的な出来事や時事に、彼女が発した言葉を紹介します。
難民の受け入れに際して
2015年8月
ヨーロッパの多くの国が難民の受け入れを渋る中
“ドイツは難民を追い返しません。もしヨーロッパが難民問題で落第するようなら、それは我々がなりたいと望むヨーロッパではありません。
欧州内で、どの国がいちばん酷い難民対応をするか、という競争にする気はありません。
この重荷を背負うべきなのは、助けを求めている難民ではなく我々なのである”
と決して終わることのない戦争の被害者に対して西側世界が負うべき責務についての道徳感を述べられました。
原発について
日本でも賛否両論である原発についても述べられています。
核エネルギーにつきもののリスクは制御できません。
人間がミスを犯さないのであれば、核エネルギーというリスクを許容できるかもしれない。
でも人がミスを犯せば,その結果はあまりにも壊滅的で、長期に及び、核以外の全ての力によるあらゆるリスクを完全に上回ります。(東日本大震災から3ヶ月後の連邦議会にて)
ドイツという国について
また、ある記者からドイツという国についての質問に答えています。
ドイツが特に悪いとか,特に素晴らしいとか、そんなふうには思いません。
私はケバブが好きで、ピザが好きです。
イタリアには美しいテラス席のカフェ文化があり、スイスには陽光が溢れていると感じます。
私はここで育ち、ここでの暮らしが気に入っています。
この国を信じていて、私はこの国の一部です。苦しい歴史も良い歴史も全て合わせて。
変な気合いがなくて、本当にグローバルな方です。
ケンブリッジ大学での講演
ケンブリッジ大学での公演に際し、メルケルさんについて
道徳的に正しいことを貫く勇気を持った歴史に残る人物であると紹介されました。
今後は、もう存在し得ないかもしれない一つの生き方を体現する人物であり、今後はもう存在し得ないかもしれない最後の希望であると。
そんなメルケルさんの講演がこちらです。
“しっかりと定着して普遍に思えるものでも、変わりうるのです。
私たちは一国のためではなく地球規模で考え,行動しなければなりません。
単独でなく,協力して…
何事も当然のものと決めてかかってはいけません。
我々に与えられた個人の自由は無条件に保障されているわけではないのです。
民主主義や平和,繁栄も同じです。
一時の感情に動かされず、自分が大切にする価値観を守りなさい。
ちょっと立ち止まる、平静を保つ、そして考えなさい。
保護主義と貿易摩擦は、自由な貿易を、そして我々の繁栄の基盤を,危険に晒します。
気候変動とそれに伴う気温上昇は、人間が引き起こしたものです。
単独でこれに立ち向かってもうまくは行きません。
壁を作るのではなく,壁を壊しましょう。
嘘を真実と呼ぶべきではないし、真実を嘘と呼ぶべきでもありません。
メルケルさんが大切にしている名言
人生に恐れることは何もありません。ただ理解するだけでよいのです。(キュリー夫人)
静寂の中にこそ力がある
何よりも理論を優先させること(父から学ぶ)
恐怖は優れた舵取りではない 否定もまた優れた舵取りではない(ヤン・スカーツェル)
まとめ
歴史は繰り返されると言います。
しかし、歴史に学び、
未来を良いものにしたいと心から願い、
過去の過ちから多くを学び、
諦めることなく
不断の努力をするなかで
世界を変えることができるのだということを
見事に体現された人物がメルケルさんです。
対立を好まず、
恐怖や否定に心を絡め取られずに、
忍耐と不屈の精神で真摯に取り組む姿勢がいま、
世界のあらゆる政治家に求められているのだと思いました。
もっとメルケルさんについても、ドイツについても学びたいとおもいました。
最後まで読んでくださりありがとうございました。